「同じ空の下で…」
甘ったるくて、僅かにほろ苦いコーヒーを口に含むと、肘をつきながら、交差点を行きかう人々を眺めて居た。
コーヒーの香りが漂っている店内は、緩やかに過ぎてく休日の時間を彩らせてくれた。
店内を出ると、由美が働く美容室を目指して歩き始めてみた。
カットとかカラーリングとかを目的とするのでは無く、ただ何となく、由美の顔を見たくなっただけ。
店の外から由美の姿がみれたらそれでいいと思った。
赤い看板と特徴的なロゴが印象的な美容室。
店の中で忙しそうにフロア内を動き回る由美。
もう、ベテランの域だろう。
指名とか…いっぱいあるんだろうな。
由美が忙しそうで元気なのを確認すると、少し濡れたアスファルトをゆっくりと歩いた。
そろそろ、戻ろうかな………。
そう思い、駅へ向かう。
部屋に着いた辺りに丁度、約束した時間が訪れる事だろう……──。
近くのスーパーに入り、夕ご飯に足りる位の一人分の食材を買うとまた、駅を目指して歩き始めた。
駅に着いて、迫り来る約束の時間を気にしながら、また落ち着かない気持ちを騙すようにし、耳にヘッドホンあてがうと、スマホの中にある曲をかけて余計な事を考えないように少し高めに音量を上げて音楽を聞く。
いつもの駅、いつもの景色、いつもの空気。
瞬が居なくなってからモノクロになりつつあったその景色に、今日は何となく色付いているように感じるのは、
やっぱり、この後の約束があるからなのかもしれない。