「同じ空の下で…」

「俺、こっちに来る前にやり残した事が一個だけあった。」

「ん?何?」

「あの半島に、艶香と二人で、行っておけばよかったなって、思った。…飛行機の中でさ。…結構時間あったのに、どうして行かなかったんだろう…ってさ。」

…あの日の朝、確か、瞬はこの景色は宝物だと言っていた気がする。

「…宝物…の、あの景色…だよね?」


「宝物は…もう、別にあるけど。…でも、もう一回だけ、艶香と行けばよかったな。」


「…うん、私ももう一度、瞬とあの景色、見たかったかも…。」


「…過ぎた事は仕方ない。…一時帰国したら、行こうな。」


「…うん、連れていってね。」


「約束しよう。」



『約束』



その希望に満ちた、たった2語の言葉。


「約束…ね?」

少しだけだけど、明るい2人の未来を垣間見た気がして…

私は少しだけ笑顔になれる。



思えば、瞬の口から約束なんて言葉は聞いたことが無い気がした。


「・・・・艶香の声きいたら、眠くなってきた…ふぁ…」

「…あ、そっちもう夜だもんね。ごめん、気が付かなくて。」

「…また、連絡する。…眠くなったタイミングで寝れば、ぐっすり寝れそうだな。」

「…だね。今日は…忙しいのに電話、ありがとう!」

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