「同じ空の下で…」

「えっ?何々~?何2人でコソコソ話してるの~?」

由美がまた、身体をひねって助手席から後部席の私たちの会話に入ってきた。

微笑を浮かべていた私の顔を覗き込むと、すぐに

「あ、分かった!瞬から連絡来たんだね?!」

…と、流石友人である事を証明するかのように、見事に当てた。


「さすがだな、由美。その通りみたいだよ。」

タケルは感心しながら、私を見た。

「あのね、昨日、電話が来て…話をしました。…ま、どうでもいいお話ですが。」

「へ~!艶香、良かったじゃん♪瞬は?元気だった?」

「本人曰く、俺はすこぶる元気っていってたよ。」

「ま、あいつが凹んでるなんて似合わないけどな。」



運転手の蓮も、その会話に入ってくる。

その後、瞬の話題はしばらく続いた。


今頃、瞬は遠いこの空の向こうでくしゃみを連発している事だろう。


ここから見える空は澄みきるような晴天で、雲は遠い向こう側に厚ぼったくまとまって見えるだけだった。


瞬、シアトルの空はどうですか?


今日は…

今日の私達は青空に守られて、その空の下で、楽しんでます。


開け放たれた窓から吹き込む心地良い風を浴びながら、目を細めて暫く空を見上げて居た。


瞬の声が、聞こえてきそうな程、その空は澄んでいて美しい蒼色だった。

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