「同じ空の下で…」
蓮の車の窓から吹き込んでくる潮風を大きく吸い込む。
海の匂いがした。
碧色の空と海、限りなく無限に続く水平線…───
「海、見えてきたぁ~!」
外に向かって大きな声で叫ぶと、由美もタケルも身を乗り出して、窓の外を見た。
「昔っからそうなんだけど、遥人ってほんと、晴れ男だよねぇ~」
由美が外の景色を眺めながら、目を細めて言った。
「そうなんだ?」
瞬に『雨おんな』呼ばわりされた私は、少しだけ肩身が狭くなり、肩をすくめた。
「…あいつが企画した行事で天気悪いって事なかったもんな。」
「うんうん。遥人はこれからハレトって呼ぼっと。」
「いや、ハレオだな。」
由美とタケルは遥人の事を好き放題に言い合う。
その場所からわずか5分位のところに、そこはあった。
「おつかれ~」
「おおっ!おつかれぇ~!」
パンツ姿にTシャツといったラフな格好の由美の姿は、背景が海辺ともなるとモデルが撮影に現れたかのように、その場が突然特別な空間に見えてしまう程の存在感だった。
同じように私だってパンツ姿にTシャツだが…。
ごく普通のありふれた一日に過ぎない…と思う。
蓮に頼まれたクーラーバッグを片手に、先に準備を整えていた嘉斗や遥人…改め『ハレト』とその彼女たちに手を振った。