「同じ空の下で…」

「英さんの彼は、今日は居ないんですか?」

「えっ?!…あ、あたしの彼氏は…」


思わず顔が赤くなる。

その様子を察して、由美が私の左側から顔をのぞかせた。

「艶香の彼は、今はここに居ないの。日本に居ないんだ。」

「えっ?!日本に居ないって…海外に居るんですか?…外国のカタ…?」

紀子ちゃんは私の顔をまじまじと見た。

「…日本の…カタだよ…。海外に出張してるっていうか、滞在してるっていうか…。」

「艶香の彼は、つい最近、渡米しちゃったの。ねっ、艶香。」

「うん、そう。一ヶ月くらい前に。」

「へ~!なんか…凄くないです??ちょっと驚いてしまいましたぁ。じゃ、今は遠恋中ですかぁ?」

「うん。そう…だね。遠恋中…。」


紀子ちゃんの勢いに押されながら、私はどぎまぎしながら答えた。


遠恋…かぁ。そういう事に…なるんだよね。

今まで敢えてそんな事…自分が置かれている恋愛の形なんて考えた事が無かったけど…

『遠距離恋愛』

(しかも、外国と日本)


非現実的な事をしているかのようで…いまいち実感が湧かない。


遠距離恋愛なんて…他人事でしかないと思ってた。


そっか。

今、私は…遠距離恋愛中なんだ…ね。
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