「同じ空の下で…」

「じゃあ、待ってます。」


半分だけ後ろを振り返り、セレブ高梨は私に笑いかけた。


「あの…待たれても困ります…が…」


言い終わるか言い終わらないかの内に、セレブ高梨は村越常務の重役室へと入って行ってしまった。


自分のもたもたした性格に、本当に腹立たしさを覚える。



常務室へ勝手に入ってしまった故、私も慌てて湯茶の準備をする為に給湯室へ駆け込み、湯茶の準備をした。




…私は…

世間一般に言えば…

今日は…


ラッキーデーなのだろうか…?



いきなり男性からお誘いをうけ…(しかも、高嶺の花であろう人間に)、その男性から興味が湧いたなどと言う言葉をいただき…。


多分、いい事づくめだろうね、うん。今日は本当にいい日なんだろうと思う。


だけど、どこか躊躇ってしまい、相手を拒否したくなるっていうのは、瞬の存在があるからなのだと思う。


様々な思考を巡らせながら、常務室の前にで、お盆に乗せたお茶を持って背筋を伸ばして深呼吸をすると、そのドアをノックした。

「失礼します。」

「どうぞ。」


来客用のソファーに、常務より偉そうに足を組みくつろいで居る、高梨。


その目の前にお茶を置いた時、またもや視線がぶつかる。

「ありがとう♪」

悟られないように目線を逸らして常務の横にいき、お茶をデスクに置いた。

「ありがとう。書類は届けてくれたんだね?」

「はい。無事に届けてまいりました。」

「そうか。ご苦労さん。」

「では、失礼します…」



踵を返すと、なるべく、高梨の顔を見ないようにして、その部屋を後にした。
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