「同じ空の下で…」
「女性は、そうであってほしいものですね。媚を売る人間が一番嫌いでね、あなたはいつだって、その影すら見えない。大抵の女性は、ネコナデ声で僕と会話をするというのに…その逆で、ケンカ越しの口調。…素晴らしい女性です、英さんは。」
「・・・・は、はぁ…。あ、ありがとうご…ざいま…す。」
私は今、褒められてるのだろうか?けなされているのだろうか?
喧嘩越しになってしまうのは、そっちが強引だからであって、強引ではなく、優しく紳士的にエスコートしてくれさえすれば、喧嘩越し口調にはならないのに。
…いや、最初は、高梨は紳士的だったのに私がもたもたといちいち話す事を考えていたからこそ、彼は強引にここへひっぱってきたのである。
…あたしが、原因か…。
そう気づいた時に、思わず肩を落として頭を下げて、深くため息をついた。
「貴方を見てると、飽きないですね。」
ずっと見られていたのだろうか?
はっとして顔を上げてみれば、緩やかな表情を浮かべて、私を見る高梨。
そして、ゆっくりと眼鏡を外し、ビジネスバッグの中のメガネケースにしまった。
「これで、私とあなたの間を遮る障害物は一切なくなった。」