「同じ空の下で…」

その抜け殻のようなアパートに戻ったであろう亮太から、メールが来た。



[from.亮太①]

[本文:いままでありがとう。それといままでごめん。元気で]




夜遅くまで新居での荷ほどきに追われていた私には、そのメールに浸る時間も、亮太との思い出に浸る時間も全く無かった。確認すると、すぐ様、メール画面を閉じ、充電器に差し込んだ。



とにかく、明日、ごく普通に出勤しなければ!



その為にもいち早く普通に生活が出来るように環境を整えなければいけなかった。







夜11時を過ぎた頃だろうか。


やっと一通りの事を済ませ、くたくたになりながらもシャワーを浴び、洗いざらしの髪の毛をタオルドライしている時だった。

そういえば、夕方からずっと充電しっぱなしで、存在すら忘れていた携帯が閑散とした新居に鳴り響いた。



こんな時間に非常識だな…なんて言う人も、もうそこにはいない。



[着信:岡崎 瞬]



誰から電話が来ようが、いちいち問いただす人間もそこにはいない。





「はい。」


「つやか?今、電話大丈夫かな?」


低音で少しかすれた声が、電話の向こうから聞こえる。


「問題ないですよ。」


事務的に私は答える。
少し鼻にかかった声で、瞬は言う。


「元気だった?」


「…ええ、まぁ、元気です。」


「そっか。なら良かった。」


…この電話の主は、いったい何が目的でこんな時間にかけてきたんだろう…と軽く苛立ちを覚える。
電話の主としばらく間があく。


「…なんだよ、俺には?元気だったとか、聞かないの?」





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