「同じ空の下で…」
目を細めてにこやかに私に笑いかけてくる。
整った顔立ち、高身長、清潔感溢れる容姿、肩書きだって″専務取締役″。
何一つ、落ち度がないように思える人間が、目の前に居る。
こんな平々凡々の顔立ちに生まれてしまった…私じゃなくて良かったでしょうに…
「…どうして、今日、こうして居る相手が私なのでしょう…?」
「僕が、英さんとここに来たかったからです。」
「私じゃなくても…他に誰かいないのですか?」
「英艶香に代わる人間は、他に居ないと思いますよ?」
「そうではなく…。」
「そうではなく?」
「…何故、私に興味があるんでしょう?」
ご好意をいただくのは大変喜ばしく、光栄な事だったのだが。
「さぁ…。僕自身も分からない。では逆に質問します。貴女は、人を好きになってしまった時に、わざわざ理由を考えた事があります?」
「…ないと、思います。気が付いたら目で追って居たとか、その人の事を考えてる自分が居るとか…。」
「じゃ、その通り。僕だって、いちいち相手への好意の根源を探る事などしない。気が付いたら英艶香の事を考えていた、気が付いたら、英艶香に会いたくなった…それだけの事。」