「同じ空の下で…」
体中の汗腺の全てが全開してしまった気がする程、汗が出てきた気がして、更には、体内の血流が一気に駆け巡った気がした。
「…じょ、冗談やめてく…ださ…い。」
上手く言葉も話せない位、しどろもどろしながら私は慌てて目を伏せ、目を泳がせ、汗ばんだ手で何とかマグカップを持ち、カタカタと小刻みに震えながらも、マキアートを一口飲んだ。
「…冗談?」
「…は、はい…。からかって…」
「何とでも思って頂いてもいいですよ。」
私とは対照的に、やたらと落ち着き、冷静に話す目の前のセレブ高梨。
更には、少しだけ含み笑いをするかのように、小さくフッっと声を出し笑うと、
「ライバル、有りでしょうか?」
と、妙に落ち着いた声で私に問いかけた。
この今の状況が、彼の言うように、″冗談じゃない現実″であるとするならば、
(彼が私に好意を抱いているのが本当ならば)それはやはり答えなければいけないのが筋である。
恥ずかしさで震える唇を開き、目を伏せたまま私は口を開いた。
「…好きな人がいますので…。」
「そうですか。じゃ、少し変えてみようと思います。」
「えっ?…何がですか?」
「貴方への接し方ですよ。」