「同じ空の下で…」
アスファルトの上からこみあげてくる昼間の暑さが余計に不快指数を上げていて、急に汗腺が拡がったかのように汗が噴出してくる。
「相変わらず、蒸しますね。」
笑顔で私に笑いかけてくるが、私は、どんな表情をして返したらいいのかも分からずに、とりあえず口を結び、口角を上げただけで、高梨に笑いかけた。
「英さんが想いを寄せるお相手とは、どんな方なんだろう…。」
「…はっ?」
突拍子の無い高梨の呟きに、慌てて彼の顔を見上げる。
「羨ましいですね。その男性。」
「いや…あの…その…。高梨さんは、充分素敵な方です。彼は、瞬は…貴方とは全く…。…高梨さんには相応しい女性がきっと…。」
「僕に相応しい女性?…相応しいか相応しくないかを決めるのは、一体誰なんだろう…と、いつも思います。父や村越さんが、何度となく僕に薦める女性には、全く興味が持てない。父や村越さんは、何度となく『相応しい女性』だと言い、見合いの話を持ってきます。英さん、貴方は僕にどんな女性が相応しいとお考えですか?」
「そ…それは…。高梨さんレベルの女性じゃないでしょうか?容姿端麗、才色兼備、それで居て、生まれも育ちも同レベル…のような、ご令嬢とか…。」
「馬鹿馬鹿しい。」
一瞬だけ、彼の顔は険しくなり、嫌悪感を抱く表情を私に見せた。