「同じ空の下で…」
「何って、仕事だよ。」
「介護か。相変わらず頑張ってるな。」
「…介護とか言わないでよ。明日、常務の顔を見たら笑ってしまうでしょう?」
私の脳裏に、のんびりとお茶を啜る常務の姿が浮かぶ。常務は、年齢の割には少し御歳を召して見える外見な為、介護なんて言ってしまえば、傍からみたらそう見え兼ねない。
「いいよ、笑って過ごせよ、艶香。人生楽しんだ者勝ちだ。」
「な、何よ、急に。」
「凹んでんなよ。俺ごときの事で。」
「…瞬こそ、なんか、今日はらしくない気がするんだけど…。」
「・・・・こっち来てから…何か、人生観変わった気がする。俺って、ほんとちっけぇなぁって…さ。」
「…。」
「…空を見上げる度に思うんだ。この空に比べたら…俺は小さすぎる。空はお前の居る日本まで続いてるっていうのに…俺ときたら…。だから、艶香もさ、あんまり小さい事でクヨクヨせずに、前を見て、上を見て…お互いに歩こうって思ったんだよね。」
「…うん。」
頷いては見るが、瞬の人生観に耳を澄ませながら、少しだけ心情的な…変な淋しさを感じていた。
瞬に置いてけぼりにされた気がした。
瞬はアメリカに行ってどんどん色々な事を吸収して、前を向いて日々を過ごしてるっていうのに…。
更には、彼は恋愛如きの事でいつまでも立ち止まって居ない気がして…何だか急に遠い存在になってしまったような気がしたのだ。