「同じ空の下で…」
その数日後の事である。
「高梨さん、先日のお話の件で打ち合わせしたい事があるのですが…近いうちに、そちらに伺っても良いでしょうか?」
専務室の内線に届いた電話の主は、彼女が勤務する会社の本田営業部長だった。
「出向いて頂くのは申し訳ない。丁度時間もあるので、こちらから出向きますよ。」
「そんな専務自らなんて…、恐縮です。」
「いいえ、とんでもないです。少し社外の空気を吸いたい気分なので。」
そう答えると、本田営業部長が笑いながら答えた。
「では、気分転換にいらして下さい。お待ちしてます。」
「1時間後に行けると思いますのでお時間の調整をお願い致します。」
「分かりました。気を付けて!では。」
電話を切ると、外の景色を眺めた───…
充分過ぎる大きな窓からは、光が差し込んでくる。
眼下にはオフィス街を行き交うスーツ姿の人々が、まるでジオラマを見ているかのように忙しく行き交う姿が見える。
地上5階から眺める景色は、どこか侘しささえ感じるものだ。