「同じ空の下で…」
知り合いの空間コーディネーターが、この専務室をコーディネートしてくれた。
お蔭で、申し分ない内装だった。
結構、気に入っている。
四方の内、三方は白壁で統一されているのだが、東側の一面のみがグレーのアーガイル模様のクロスを施して貰った。
基本的に、そこは俺が好きなように色々とピンナップできる仕様になっている。
今は、新プロジェクトの完成予想図をピンナップしていた。
そして合計3台のパソコンディスプレイが並ぶ俺のデスク。
時には自前のノートパソコンが並ぶと、はっきり言っていかにも仕事してるかの様な雰囲気が醸し出されて、堅苦しい部屋そのものだ。
その、一見堅苦しい部屋を和ませてくれているアクセントとなる大きなベンジャミンの鉢植えは、庶務課の女子社員達が手入れをしてくれているお蔭で、いつもイキイキと緑色を湛えていた。
いつでも一人のその空間で、俺は一つ大きく両手を広げて伸びをすると、ブラインドを下げながら、また眼下を見下ろす。
内線を手に取り、社用車の手配を庶務課に依頼して、その空間から飛び出した。
車中、普段あまりかけないのだが、ビジネスバッグから眼鏡を取出した。
もともと、視力はそう悪くはない。
遠視と診断された事はあるが、日常生活を送る分には、なんの支障もきたさなかった。
だが、社外との打ち合わせに出向く時は、なんとなく掛けるような癖がついていた。