「同じ空の下で…」

社用車の後部座席から、窓の外の景色を眺める。

季節は、相変わらずの梅雨で、気温の割には暑そうに速足で歩く人々が見えた。


15分程度で、その場所に着くと社用車を一度帰らせた。

車を降りると、少し着崩れてしまったスーツを着直す。

ビルの前に立ち、その最上階を見上げた。

そして、ガラス張りの少しデザイン性の高いドアを開け、その足で受付に出向き、社内入館許可証を受け取ると、本田部長の居る階を教示され、そこへ向かった。

今日は少し体を動かしたい気分だったので、俺は7階フロアに向かって階段を昇り始めた。


そして、4階あたりまで昇った時の事。



浮かない顔で慎重に階段を降りて来る、制服姿の女性が目に入った。

ヘアスタイルは清潔感に溢れたまとめ髪で、少し伏し目がちに、胸に書類を抱えて居た。

見覚えのある容姿・・・・。

そう、先週の土曜日に見かけた、雨の似合う…あの人だった。

ハナブサ ツヤカ。


…驚いた顔で見られるが、俺はもっと驚いた。

この会社の中で、どれだけの人間が働いてるのかは知らないが、彼女一人だけが働くオフィスではない。

だというのに、会いたかったその人に出くわすという偶然は、必然の出来事だったのかと身勝手に勘違いさえしてしまうのだ。

柄にもなく、

鼓動が急に早く拍動しだし、緊張感に包まれた。

久々に感じる感情が、何処からか湧き上がってくるのを感じる。



やっぱ、今日は出向いてみて正解だったな…♪

自然に顔が綻んだ。

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