「同じ空の下で…」
唇を半開きにして、入念にリップを塗り、更にはグロスを重ねると、鏡の中の自分に軽く微笑む。
…なんだか、これから恋人にでも会いに行くような変なドキドキが、身体の中を駆け巡る。
化粧一つでこんなにも心境が盛り上がるとは、本当に化粧というものは不思議だ。
そして、その流れでそのまま、洗面所で髪の毛をセットする。
無難な夜会巻とやらを簡単にできるキットのようなもので、髪を纏め上げた。
着替えをしながら、時間を見れば、起きた時間から既に一時間近く経過していた。
間に合うか間に合わないかの微妙な時間…。
私は少し速度を上げて支度をした。
とにかく11時からの会食に間に合わせなければいけない。
その時、瞬からのメッセージを告げる通知音が鳴った。
慌てて私はメッセージを確認した。
『つ・や・か♪今日も午後、電話していい?』
…どうなんだろ…?
午後には、会食は終わってるんだろうか?
お供の業務が終わってたらほんの数分でも電話はできると思う。
約束できる時間が分からないのに、約束をするのは瞬に悪いような気がした。
色々思考を巡らせながら、瞬に返事を返す。
『Re: 瞬、ごめん。今日は仕事だから、電話できないと思う。』
すると、すぐさま、瞬からの返事が届いた。
『了解!良い休日を~。』
その短い文を見て、寂しい気持ちになり、小さく溜息をついた。