「同じ空の下で…」
「わかりました。こちらこそ、今日はありがとう。…すまない。停車できる所が有ったら停車して貰えるかな?」
軽く納得したように、澄んだ瞳を一瞬伏し目がちにすると、高梨は運転手に指示を出してくれた。
「了解です。」
数分して車の列が少しだけ前に進んだタイミングで、ハザードランプが点滅する。
「どうぞ。すいません、わたくしがドアをお開けするべきですが…なんせこのような状態で・・・・」
「分かってますよ。どうかお気になさらないで下さい。…じゃ、准一さん、また何処かで。」
私はドアのノブに手をかけて、早々に降りる体勢を取り、高梨に声をかけた。
「また、艶香さん。後ほど、ご連絡します。」
「…は、はい?…わかりました。」
傘を開き、すぐさま降りると高梨は、雨に佇む私に律儀に会釈した。慌てて私も返す。
ハザードランプを消したその黒塗りの車は、緩やかに車の列に戻って行き、ほんの数分間だけその車を見送ると、足を速めながら、自分のアパートを目指し、歩き出した。
…異常に疲れた一日だった。
どれだけ心臓があっても足りない。
ドキドキしたり、ときめいたり…落ち着く間がないのに、時間が緩やかに過ぎて行き、びっくりするほど時が経つのが早く感じる一日だった。