「同じ空の下で…」
「…てか、スマホの電源、落ちてたの?意図的に切ってたの?」
「…今日は…仕事で、携帯の電源落とすように言われてて…」
「仕事って、今日、土曜だろう?土曜に仕事なんて、珍しいな。」
「…常務の、お供だった。会食のお供で…」
私は、大嘘つきだ。
タケルにすら、正直に今日の出来事を話せずに居る。
会食なんて名目上で、本当は…お見合いしてたなんて事…。
しかも、その見合い相手にこの右手をしっかりと握られて、振り払う事すら出来ずに、暫く雨を眺めて時間を共にしてしまい、
家に帰ってからのさっきまで、その人の事を考えられずには居られなかった事…
瞬のお祖父さんが大変な時に、私は一体何してんだろう…。
他の男の事を考えていたなんて…
瞬の彼女失格…いや、むしろ人間として…酷い人間だ…。
「…つやか?」
「…ん?」
「聞こえてる?今日はなんかいつもと違うけど、疲れてる?」
「…ううん、大丈夫…」
…本当は、全然、大丈夫なんかじゃない。
今日は、酷く疲れた一日だった。
「夜遅くにごめんな。瞬の事、伝えておかなきゃと思って。あいつの事だから、きっと肝心な事いわないかもなって思ってさ。」
「…うん、ありがとう。迷惑かけたね…。」
「迷惑なんて思ってないから、気にすんな。」