「同じ空の下で…」
「…そっか。」
タケルは優しく答えてくれた。
「抱きしめて貰えよ、ちゃんとその事、素直に話してさ。」
「…話せるわけ、ないじゃない…」
「話さないと…想いは伝わらないだろ?帰国したら一杯抱きしめて貰えよ?」
「…瞬が…大変なのに、そんな事、言えないよ…。」
「大変だからこそ、素直な艶香の想いが、嬉しいんじゃないのか?」
「・・・・そう…かな?」
「そうだと…想うけど?」
「…重荷…じゃない…かな?」
「そう思うような、相手じゃないって、艶香が一番よく知ってるだろ?」
「…瞬の事なんか…瞬なんか…全然よく分からないよ…。」
色んな顔の瞬が頭の中に浮かんでくる。
優しい顔、困った顔、冷たそうに私を見る顔、甘える顔…。
瞳の中に私を映す…愛しそうに私を見る顔…。
忘れかけてしまいそうだった。
あの時の、瞬が渡米する前の…感情と熱と体温と優しさと。
目の前の他人の体温に負けそうな気がしていた。
下唇を噛み、これ以上涙が出ないように、私は食いしばる様にして、涙を堪えた。
「艶香、明日、時間あったら、飯でも食おうか?」
「…やだよ。こんな…タケルに…どんな顔して会ったらいいか分からない…」
「何も恥じる事はないよ。今の艶香のまんまでいい。俺は何も驚かない。」