「同じ空の下で…」
「遅れてすいません。昼間に電話した岡崎です。」
そう言って堂々と足を踏み入れる瞬の後を急いでついて行く。
「おお、瞬君、よく来たね。何も足を運ばなくても、うちの社員に届けさせるのに…」
「いえいえ、こういう事は、我々が自ら出向いてお願いするのが筋ですから。」
「そんな事言えるようになったなんて、君も成長したなぁ。」
その会社の社長さんと思われる人と瞬は、どうやら知り合いのようだった。
私はというと・・・・はっきり言って・・・・
漫画で言うと、口をぽっかり開けて、瞬が喋れば瞬を見て、社長が喋れば社長を見て・・・・それをひたすら繰り返していた。そして半ば、ぼーっとしていた。
そして、何をしたら良いのか全く分からなかった。
そう。
この状況をどう、理解したらいいのか…。
ただ、状況を見て判断しなければいけないのに、ただただ度胆を抜かれていた。
「おい、領収書!」
瞬に小突かれてドキッとし、慌てて我に返ると、昨日バッグの中に準備していた領収書ををあわてて探した。
「ああああ…す、すいません。」
会社名を確認して、印紙を貼り、自分の判をつき、急いで相手に渡すと社長さんにプププッと笑われた。
「初々しいねぇ。新人さんかな?」
いえいえ・・・・充分新人の時代は過ぎてますって。
「じゃ、お忙しい所、すいませんでした。失礼します。」
「し…失礼します。」
「頑張れよ~。期待してるから。」
笑顔で見送ってくれる社長さんと別れ、バイクの所に向かう。
「さ、次行くぞ。」
「ま、まって!!!ストップ!!!」
慌てる私を瞬が怪訝そうに見た。