「同じ空の下で…」

タケルが誘ってくれたお店まで、二人で肩を並べて歩く。

その場所に着く間、瞬と交わした一連をタケルは事細かく話してくれた。

なんだか、タケルの話し方を見ていると、イベントの時にとんでもなく忙しかった時の事務的な口調のタケルを思い出す。

「で、艶香は、瞬の御祖父さんには、会った事は?」

「ううん、会った事ないよ。…御祖父さんどころか、瞬のお父さんやお母さんも知らないよ。」

「…ふ~ん…。意外だったな…。」

「え?何で?だってあたしたちは…そんな…」


"互いの両親を紹介し合う仲"…迄には…、至って居ない。


「…あ。敷いて言えば、瞬のお姉さんと義理のお兄さんは分かるよね。ほら、あのレストランの…タケルも一緒だったじゃん?」

「ああ、うん、そうだな。…親族を知ってるのも、艶香もその程度か。」

「…うん、その程度。」


そこまで会話を交わすと、私は前を見据えた。

"私と瞬は、その程度の関係…───"

渡米した瞬を待ち続けた末に待ち受ける2人の未来を約束したのは、2人で一緒に暮らす事…ただそれだけだった。



緑を湛えたオープンラウンジには、一人ランチを楽しむ人や、久々の友人同士の会話に話しを弾ませる人々の姿がある。

「ここだよ。日本語に訳すと『ザ・食堂』って意味さ。」

「へ~。ちょっと変わった名前のお店だね~」

イタリアン食堂『La taverna(タベルナ)』。

タケルに促され、先に私が店内に入った。

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