「同じ空の下で…」
豊富なメニューの中から、『小悪魔風ペンネのアラビアータ』と『ラヴィオリ』と、タケルが愛してやまないという『温泉卵のっけ カルボナーラ(大盛り)』をオーダーすると、私はゆっくりと店内を見渡した。
「タケルも…結構お洒落なお店を知ってるんだ~…」
と、思わず出てしまった私の言葉にタケルは即反応し、足で私の靴を小突いた。
「…俺だってそれなりの店は知ってる!なんだ、その馬鹿にしたような言い方は…!」
「だって、ここでタケルが一人で食事する姿が全く想像できない…」
陳列された沢山のワインの瓶。
白く塗られた壁。
程よく濃い茶色のむき出しの柱。
時折、癒す為に置かれている、可愛いミニチュアの小物達…───。
内装も充分に小洒落て居た。
「ま、ここには、特別な女子しか連れて来ないけどね。」
「アハハ!そうなんだ?とても光栄です。」
私はなにゆえ、タケルの特別なのか…。
「所でさ…艶香、俺の話していい?」
「うん、いいよ。どうした?」
「先日、うーん、1週間前くらい?…かな。里奈に告られて…さ。」
「あ…う、うん?で、どうした…?」
里奈の名前を聞き、ちょっとだけ、鼓動が早くなる。
里奈…は、タケルの事が好き。
更には、お見合いしてしまった…高梨と同じ会社であり…その高梨は里奈にとっての憧れの存在である。
…と、話していた事を思い出す。
・・・・完全に、私の存在って、里奈からしたら疎ましい存在に置き換えられる…と、少しだけ今日のこの状況に引け目を感じた。