「同じ空の下で…」
「…で、艶香はどうして昨日は泣いてた?」
タケルは、パスタを器用にフォークに絡めると、口に頬張りながら私の目を真っ直ぐに見た。
「…えっ?!」
思わず、口の中から数本のペンネが落ちそうになる。
口の横から少しはみ出たペンネを吸い込むようにして口の中に収めると、目を見開くようにしてタケルを見た。
全身が、きっと…このペンネのように、アラビアータのように…赤く染まってるだろう。
「…世の中、上手くいかないからね。とてつもなく、瞬が恋しくなったダケだよ…。」
「…瞬とは、上手くいってるんだよな?」
「うん、まぁ…それなりに、多分、順調…。ただ…」
そう言いかけて、私は高梨との事をタケルに話すか、話すまいかと、少し考えた。
「ただ…?」
怪訝そうに私を見るタケルの瞳には、全く私を疑う余地すら見当たらなく、澄んだ瞳をしていた。
「…ふぅ…」
少しだけ、溜息をつく。
そして、少しだけ息を吸い込み、タケルの瞳を見た。
「とんでもない人から好意を寄せられて困っていたんだ。」
・・・・私は多分、この先もこれからも、タケルには嘘をつく事と隠し事が出来ないと、なぜか直感で思った。
だから、自ら打ち明ける事を選んだ。