「同じ空の下で…」
「…よく…わかんない。ついこの前も言ってたけど、好きなヤツ出来たらちゃんと俺に言えとか、でも、渡米前には俺の事待っててとか…。何だか、この前なんて、すっごく人生観変わったとかで…急に瞬が遠い存在になったような気がして…。」
瞬の事なんて聞かれたって、当然上手く纏まらない。
自分の中に生まれてくる言葉達を矢継ぎ早にタケルに話す。
「…なるほど…な。瞬だって、きっと迷いは沢山あるんだろうし、あいつなりに葛藤も生まれるんだろうな。で、艶香は、その御曹司とやらにはどう答えたの?」
「迷惑って言った。」
「したら?」
「迷惑はかけません、て。友達として、好きになってもいいかって聞かれた。」
「変なヤツだな。瞬の存在知った上でのその反応なのか?」
「…やっぱ、そう思う?…瞬というか、遠距離恋愛中だとは答えたよ。」
タケルは、口をモグモグさせながら、頷いた。
「…価値観が、きっと俺らと違うんだ。彼氏いるやつに宣戦布告ってどれだけ自信過剰なんだ…。」
「そうだよね…。でもまぁ、悪い人間ではなさそうな気がしたけど。あの顔でそんな事言われたら、多分、フリーだったら、速攻仲よくなったかもしれないな。…あ、これ、瞬には内緒ね。」
「言えるかよ。…その人、そんなにカッコいいの?」
「高身長、おそらく高学歴、高収入。それに加えて池様。」
「おいおい……あっさり靡くなよ、艶香。心配だな…。」
私の事を横目で少し睨むタケル。
その視線に応えるように、私は少しだけ眉間をよせ、困ったようにしながら片眉だけ上げ、声は出さずに顔だけで返事をした。
そう、瞬がよくやる仕草を真似てみたのだ。
タケルは、ニヤリとすると、またパスタを頬張っていた。