「同じ空の下で…」
「…何か、あった?」
「何も、ないよ。」
「そっか。」
納得したのか否かが全く分からなかったが、その短い会話の後の少しの沈黙が、酷く私を焦らせてしまうのである。
自分では、全く動揺してる自覚はないのだけれど、どうやら、瞬にとっての私の反応は、いつもの私とは違った印象を与えてしまったらしい。
いつもの私なら、どう答えたというのだろうと、逆に聞きたくなる。
そんな事をごちゃごちゃと考えていると、瞬の声が電話の向こうから聞こえた。
「8月の最初の月曜に、そっちに着く便で帰国する。」
「えっ?!ちょっと待って、今カレンダー見る。」
俯いていた顔を咄嗟に上げ、慌ててカレンダーに目を移し、日にちを確認する。
「月曜…ね?」
「そう、月曜。どうせ艶香は仕事だろ?」
「うん…平日は、仕事だよ…。」
「だろうな。承知の上だ。じいちゃんのとこに直行するし。」
「でも、有休…とるよ。」
「いいよ、無理スンナ。」
「…無理してない。迎えに…空港に行きたい。瞬に…」
…会いたい────。
「ん?」
「瞬に、会いたい。」
「じゃ、会うか。」
「…うん。会う。」
「どんな格好で出迎えてくれんの?」
「はっ?!」
「両手いっぱいに花束とか持って立ってるとか?」