「同じ空の下で…」
「船ですか?!」
「はい。父が所有してる船ですが、どうでしょう?興味ありませんか?」
「…わ、私は…ご、ご遠慮します…!」
「何故?」
「…に、苦手なんです。」
「船が?」
「は、はい。」
…船が苦手なんて、大嘘で、何とかこの誘いを断らなければと、私は思考錯誤した。
「じゃあ、父と村越さんがクルージングしてる間はマリンジェットで私達は楽しむとしましょうか?」
「ま、マリンジェット?!」
「はい。水上バイクのようなものですが…。」
「え、遠慮しますっ!」
だ、だって、今度は…。
水上バイクに跨るということは、この人の背中に抱きつくということでは…!!
私はその自分の姿を想像し、一人赤面して高梨の顔を見上げた。
「海は、苦手ですか?」
私を直視する彼の瞳。
目が合っただけで、こんなにも動揺してしまうのは何故なのだろう。
高梨准一のルックスのせいなのだろうか。
「苦手…では、ないですが…。」
…本当は、これ以上、高梨のまっすぐな思いに惹かれてしまいそうな自分が居て…
怖かった。
瞬の事がめちゃくちゃ好きな筈なのに
彼の誘惑に心が揺れてしまうのは…どうしてなのだろう。
「…残念です。わかりました。諦めます。」
高梨は、私から目線を逸らすと、静かに目を伏せた。
「英君、どうしたんだ?」
常務が少し不思議な顔で私を覗き込む。
「申し訳ありません…」
何に謝ってるのか、自分でも良く分からずのまま、私の鼓動は早くなったままだった。