「同じ空の下で…」
大体、高梨はいつだって常務伝いに私を誘う。
それは、私が常務に関われば断らないであろうという彼の策略なのだろうか。
確かに、個人的アドレスなんて高梨に教えてないし、常務経由になるのは分かるが…ならば何故、私に直接アドレス等を聞いてこないのかが、全く不思議である。
実は極度の臆病ものとか、奥手なのか…?
いつも自信たっぷりで余裕すらかますような素振りなのに。
「英くん。」
色々と一人妄想やら想像やらを巡らす私を遮るように、常務が私を呼ぶ。
「はい?」
「英くんの事は、准一君のお父さんからのご指名だ。どうかね、船が苦手なら何が良い?」
常務は、深く椅子に腰掛け、背もたれにもたれかかりながら私を見た。
その問に、酷く困る…私。
「…もったいない、…お言葉です。光栄…です…。」
私は常務に向かって頭を下げた。
心に嘘をつきながら、胸の奥がキューンと締め付けられる。
「ま、准一君と気軽に連絡を取り合って、彼伝いに君の予定を我々に伝えてもらうとしよう。それで良いかね?」
「…えっ?!」
驚いた私を綻んだ顔で見つめる、高梨。
これも…彼の策略なのか?!
私は目を見開き、彼の顔を見上げた。
「願ってもない…展開ですね。」
優しく、心地よいトーンで、彼は柔らかく微笑んだ。