「同じ空の下で…」
「あれ?どうしてつやかちゃん…浮かない顔して溜息混じりなの?」
「…色々と…。」
私は肩を落として、無言で湯呑茶碗を拭き上げ作業を淡々と進めた。
「艶ちゃん?何か…顔色が優れないみたいだけど…大丈夫?」
「…大丈夫…だと思います…。すいません、香織さん、お先に失礼します…」
拭き上げを終えて、私は香織さんに頭を下げるとその場を後にした。
ゆっくりと浮かない顔でロッカールームに向かい、私は帰り支度を始めた。
軽くメイクを直し、リップを塗り直すと自分の顔を見た。
…気が、重い…。
重い足取りで、社内階段を降り、ロビーまで降りると、入り口の所で黒塗りの車が一台停車していて、その中には、何やら真剣な顔で誰かと話す高梨の横顔が見えた。
運転手さんが私に気付くとすかさず降りてきて、後部座席を開けてくれて、小さな声で
「ありがとうございます…」
と一礼すると、その席に乗り込んだ。
高梨は、どうやら…中国語のような言葉で話をしていた。
私は半ば放心状態で、前を見据えていた。
気が重いと思っていたら…どんどん気分が沈み、更には頭が痛くなってきた。
間を取り繕う為にバッグの中のスマートフォンを覗き込む。
特に誰からのメールも着信も無かった。