「同じ空の下で…」
数分後、誰かとの打ち合わせの電話を終えた高梨は、
「すいません、取引先からの電話でした。あ、行ってください。」
と、私に一言かけたと思うと、運転手さんに合図を出した。
「…僕が仕組んだと思ってます?」
高梨は、私を悪戯に見た。
「いいえ。」
「不機嫌ですね。」
「そんな事はありません。」
「顔に出てますよ。」
私は彼の顔を見ず、そのまま前を見据えたまま…淡々と話した。
「どこに向かってるんですか?」
「食事でも如何ですか?貴方を連れて行きたい場所があるんです。」
「そんな…展開ですか。」
「ご迷惑ですか?」
「…はい。と言っても、私は貴方の思うままにそこへ連れて行かれるのですよね?」
「ええ、その通りですよ。ですが、本当に迷惑と思われてるなら、このままご自宅までお送りします。」
「紳士ぶってるみたいですが、結構強引ですね、いつもいつも…。」
「…見抜かれてますね。気分がいい。」
「普通、気分を害する事を私は敢えて申し上げてるんですよ。」
「その心意気が僕にしたら、心地いいんですよ。今まで出会った女性と違うあなたの反応は逆に新鮮なんです、僕にとって。」
「そうですか。相変わらず変わってらっしゃいますね。」
私の高梨に対する反応は、ますます彼の気分を良くしている…らしく、私は一旦口を噤んだ。