「同じ空の下で…」

「海、本当に苦手なんですか?」

「いいえ。…彼に悪いと思っての口実に過ぎません。」

「僕は、貴方の友達ですよ。そう、彼に伝えたらいい。」

「変に、不安を煽りたくないんです。逆に貴方が私の彼の立場だったら、そう思いませんか?」

「ははっ!ごもっとも。」

高梨は上機嫌に笑った。

突然の笑い声に、思わず彼の顔を見ると、屈託ない笑顔でまるで少年のように嘘偽りなく純粋に笑って居た。

その笑顔は…私の胸の奥のどこかを少しだけ刺激した。

切ないような…変な感情が湧きあがる。

だから、二人っきりの時に彼の顔を見てしまうのは嫌なんだ。

今度は、高梨とは反対側の窓に目を向け、彼の存在を意識しないように、遠くを見つめた。

外は、まだ明るく、夕焼けの少し手前で、茜色になりつつある西の空が、美しいグラデーションを空に描いていた。


瞬が見上げている空は、今、どんな色なのだろう…?

どんな気持ちで、空を見上げてるのだろう?


私は…

確実に…瞬に後ろめたい気持ちで…

空を…見上げてる…。

ごめんね、瞬…


一人黄昏ながら外を見ていると、高梨が突然、神妙な声で私に言った。


「僕は、幼いころに母を失いました。」

「えっ?!」

「今、父の妻として居る女性は、後妻に当たります。」

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