「同じ空の下で…」

エレベーターに早送り機能がついていたら、そのボタンを何度も何度も押したい。

閉じる・開くのボタンの横にでも、″早送り″というボタンがついていたらと、何度もそこを凝視する。

「…艶香さん、緊張されてますか?」

思えば、私の手も相当熱くなってるにちがいないであろう。

彼を見上げて私は頷いた。

「こうゆうところに来るの…初めてなんです。それに…」

「それに?」

「…彼に悪いと…後悔してるんですが…」

「ならば、この手を振り切って逃げたらいい。」

「…頭の中ではそう思うのに、それが行動に移せないんです…。どうしたらいいのでしょうか…?」

「では、現状維持で構わないと思います。」


微笑むな。

私に向かって、微笑まないで、高梨さん。


手を握る優しい温度にさらに熱を込める様に、彼の手に力が込められた。

それと同時に、ふんわりと私の頬に高梨の髪の毛が軽くあたる。

その感触を感じて、そのまま高梨の唇の温度が私の頬を擽る。

「…!」

目をおもいっきり開眼させて、高梨の顔を見る。

「な、なにするんですかっ!」

「やっと見つけた一瞬の隙が、又と無いチャンスだったもので。」


・・・・こんな状況だっていうのに、握られた手を離すに至らないのは…

ナゼ?


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