「同じ空の下で…」
高梨の悪戯な笑みの奥に、どこか瞬と重なる部分を垣間見る。
微笑まれて、なぜか拒めない私もそこに居る。
見つめられて、トクトクと心臓の音を高鳴らせてる自分が居る。
エレベーター空間のせいなのか、無重力にふんわりと浮いているような変な感覚が全身に走る。
ジッと彼の顔を睨むようにして見ているけど、高梨は表情に余裕すら浮かべて私に微笑んでくる。
「愛らしいお顔立ちです。」
褒められて陶酔しそうな程の心地よい感覚を覚えてしまっている。
「…ただの社交辞令にしか聞こえません。」
彼の顔を見ながら何とかかんとか事務的に応答する努力をする。
「…社交辞令?…面白い発想ですね。」
余裕の笑みを浮かべると、ゆっくりとエレベーターがその階に到着して、私と高梨はエレベーターを降りた。
やっと息が出来ない空間から解放されて、私は少しだけ深呼吸をする。
この人が一体どんな人間なのかが全く見抜けない。
からかわれているような、でも心底好意をもってくれてるような…もしくは女性慣れしてるのかもしれない。
リストランテの受付に合図するように目配せをする高梨に、受付の男性は頭を軽く下げたあと、席まで案内をしてくれた。
夜景が一望できる窓際の席。
【reserved】
と書かれた札が取り外され、私はその席に進められるがまま、座った。