「同じ空の下で…」
「僕だって、女性と食事する事はあるよ。」
「私がお誘いしても、一度も御一緒出来ないというのに?」
そんなやり取りを聞いていると、凄く、居心地の悪さを感じる。
「僕にだって選ぶという権利はあるはずだ。」
そう答える高梨の顔は、無論冷静そのものではあるが、私にはあまり見せた事のないような冷めきった瞳をしていた。
「…准一さんは、相変わらずですね。…お邪魔のようなので失礼します。では、良いひと時を…。」
プライドを切り裂かれたその女性は、ヒールの音を響かせながら少し年配の男性の元へと歩いていった。
軽く手を上げて答えた高梨は、表情一つ変えずに、窓の外へと目線を移していた。
バツが悪い私はどうしてよいか分からず、緊張と戸惑いで渇いてしまった喉を潤そうとグラスの中の水に口をつけた。
「…高梨さん、もてるんですね。」
「僕自身に興味がある訳じゃない。特にあの人はね。」
「どう言う意味ですか?」
「肩書き、家柄…そういう付属の物に執着してるだけだ。」
高梨はボーっと景色を見ながら、面倒臭そうに答えた。
少し寂しさを湛えたその表情に見とれてしまいそうになり、私も同じように窓の外に目線を移した。