「同じ空の下で…」
「…ああ、早く会いたいな…」
「うん…私もだよ…。」
そう答えて、私は少しだけ視線を落とす。
そして静かに葛藤した。
瞬の声で、何もかもが忘れかけていた感情やらが湧き出てくると言うのに…
何故か…
瞬の顔が思い出せなかった。
瞬の癖…、指の形、唇の形とか…私を見る瞳の色とか…部分的な事は思い出せるというのに、
私が恋焦がれているはずの顔が…
思い出せない。
無論、部屋に戻ればあの写真があるから思い出せるんだけど、急には思い出す事が出来なくなってしまったのは…
多分…
高梨の笑顔の方が記憶に新しいからだと思う。
─────…
あの夜…、そう、高梨との食事をした夜。
何とか落ち着きたくなって、少し度のきついアルコールを頼んで見事に失敗してしまった。
悪酔いと言っても過言ではない程、上機嫌になった後、泣き上戸になって、フラフラになってしまって…
彼に抱えられて帰宅した。
いわば、スキだらけの状態になってしまった私は、彼の思うツボになってしまった訳で。
ほっぺたどころじゃない。
何とも情熱的で優しいキスを…美しい夜景を背景にして…受けてしまったのだった。