「同じ空の下で…」
後から思い返してみれば、顔から火がでる思いだが…。
よくよく記憶をたどっていけば、
『私に触れないで下さい』
…なんて、いってしまった後だと言うのに、抱えられなければ一人で歩けない程に酔ってしまった私を介抱しない訳にはいけなかったわけで。
私が全て悪かった、落ち度は私にあるんだ…と、深く後悔した。
そして、あの時の会話ときたら…。
本心のままに胸の内を話した事すらも、彼にとっては嬉しい言葉がやっと出てきてしまっていた訳で。
『好きになりそうだから、嫌いになってほしい。』
なんて、好意がある相手からそんな事を言われたら『じゃ、自分に好意をもってくれた証拠じゃないか』と思うのが普通の流れであって…。
自分に置き換えて考えてみれば、高梨がそうしたように、隙あらば想いをぶつけていくのが自然だろう…と思った。
バカだなぁ、私。
なんであんなこと言ってしまったんだろう…と、つくづく単細胞な自分に嫌気が差した。
「どうぞ、好きになって下さい。」
そう言って、私の唇に体温を与えた高梨の瞳は、記憶に新し過ぎて…頭から離れない。
そして、その時の…切ない程のキスの感触だって…
この唇が覚えてしまっていて…刻まれてしまっている…。