「同じ空の下で…」
エスカレートして、その唇がうなじや、耳元をくすぐり始めたあたりにやっとの事で彼からフラフラと離れることができて、
「今日は…帰りたいです!」
と、少し息を切らせ肩で息をしながら、彼の情熱を断つ事が出来た。
酔っていたとしても、理性ってヤツが、私にもちゃんと備わってるんだと思った。
「次は…帰しません。」
そういって私を見るあの視線は、世の女性をどれだけ虜にしたら、気が済むのかと思うほどの…美しい顔立ちだった。
独り占めしたい…と、私の中の悪魔が囁いた。
帰路までの道、タクシーの中で私は、高梨に肩を抱かれながら、そのまま肩を借りて、少し心地よくなってしまっていて、半分、眠っていた。
「自宅、どこですか?」
「・・・・」
「艶香さん、どこにお送りすれば?」
「・・・・」
「答えてくれないなら…僕の部屋に…直行しますよ?」
その言葉で、一気に目が覚めて、やっと私は高梨に自分の住所を告げた。
頭を抱えられて、髪を撫でられて…
久々の人の温もりに…完全に酔ってしまって…溺れてしまって…。
距離という言葉に負けた自分が居て。
そのまま、酔った私は高梨に寄り添っていた。
瞬の存在が・・・・私の記憶から完全に消えていた時間だった。
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