「同じ空の下で…」

唇が離れると、瞬は私のおでこに自分のおでこをくっつける。

そして、さっきまで刺激を与え続けていたその甘美な唇で囁くように言う。

「…続きは…場所変えよう…な?」

久々に見る、茶色がかった大きなその瞳には、私の姿がうつっている。

「…うん。」

私は瞬の瞳をしっかりと見て、素直に頷いた。




再会の儀式ともいえるような、ハグとキスで、すっかり化粧なんて剥げてしまっているだろう私は、瞬と手を繋ぎ、その手を強く握り締めて、彼の行く方向に素直に無言で着いて行く。


空港を出ると、何かを確認するようにする瞬を見つめながら、何も言わず彼の後を着いて行く。

夢みたいだった。

この事が現実なのか、それとも夢なのかが良く分からないようなふわふわした気持で、歩いていた。

歓喜に満ち過ぎているのか、私は全く言葉が出ない。


タクシーを見つけると、瞬はそこで立ち止まり、

「先に乗って?」

と、私に先に乗るように促した。

「うん。」

私は素直に頷くと、タクシーに乗り込んだ。

スーツケースをトランクに入れてもらうと瞬も私の横に乗る。

「…どちらまで?」

運転手さんの問いかけに、瞬の御祖父さんが入院している病院を告げると、空港を後にした。


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