「同じ空の下で…」
疲れてるのかも…しれない。
あまり…話しかけてはいけないような気がして、私は口を噤んだ。
病院に着き、特別室がある階を総合案内で教示されると、また静かに歩き、二人でエレベーターに乗る。
終始、あまり言葉を発しない瞬。
疲れている…よりも、もしかしたら御祖父さんの容体が…心配なのかもしれない。
花を持ち替え、瞬の顔を横目で見ると、すごく寂しそうな、伏し目がちに悲しそうな瞳をしていた。
こんな時って…本当に無力である…。
病室の前まで来ると、静かにノックして、ゆっくりとそのドアをスライドした。
明るく、まるで病院とは思えないような室内。
その奥でベッドに横たわって居る瞬の御祖父さんは、目を閉じ、酸素マスクのようなものを口につけて、点滴と電子音がする機械を付けられていた。
瞬の顔に緊張が走っていた。
物音が聞こえた事を怪訝そうにして誰かがこちらに向かって顔を出した。
「瞬!…いつ、こっちに?!」
慌てるように、奥の和室から出てきた、瞬に良く似た品の良い初老の女性。
「…ただいま。」
「こんにちわ…。」
一瞬驚いた表情をするが、すぐに思い立ったように、女性は私に座る様に促した。
「…こんにちわ。…あ、どうぞ、掛けて下さい。」
「あ…あの、いえっ、私はここで。あの、これ…。」
アレンジメントをその女性に渡すと、私は一歩下がって瞬の影に隠れる様にして俯いた。