「同じ空の下で…」

「…俺のお袋。…こちらは、英艶香、俺の大事な人。」

「…そう。…わざわざありがとうね…。」

「い、いえ…。」

さらっと、私を『大事な人』などという瞬。

そう言われ、私の顔を見ながら柔らかい笑顔を向ける…瞬のお母さん。

私は、俯いているしか無かった。


「じいちゃん…どうなの?」

そう、静かに話す瞬に、お母さんは少し視線を落として首を横に振った。

その様子を確認すると、瞬は荷物を降ろして、ベッドの横に行き、御祖父さんの手に触れた。
そして、下唇を噛み、目を静かに閉じた。


…瞬のその姿を…私は見ているのが精いっぱいだった。

慌てて、視線を逸らし、目線を右下に移した。

「英さん…?」

呼ばれて、顔を咄嗟に上げると、瞬のお母さんがドアの所で私に手招きをしていた。


私はそのまま、その部屋を後にし、瞬のお母さんと一緒にデイルームへと歩いた。

デイルームにある長い椅子に瞬のお母さんが座ると、

「ここに、どうぞ腰かけて?」

と、促されて、素直にそこへ座った。

「…ありがとう…ね。」

「…い、いえ、そんな…私は…何も…」

「瞬は…ああ見えて寂しがり屋だからねぇ…。英さんの存在は、きっと、瞬にとってかなり大きいと思います。アメリカ行く前に…瞬からはそれとなく聞いてて、ずっとお会いしたいと思ってました…。…ずっと…お礼を言いたいと思ってました…。」

「…きょっ、恐縮です…。私は…瞬の邪魔ばっかりで…。」

「いいえ…、そんな事ないですよ。」
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