「同じ空の下で…」
私はやっとの事で我に返り、バッグの中からハンカチを取り出して、うるっときてしまった涙を人知れず拭い取った。
「…艶香?」
「な、何でもないんだよ、ゴメン。何か…2人が急にさぁ、遠い人になったっていうか…。おめでとう、本当におめでとう~!」
「つやか、そうゆうのはさぁ、披露宴の時とかにしてよぉ。」
由美は困ったようにしながらも笑顔で私の頭を撫でた。
その様子を横目で見てた瞬は、私の腰あたりにそっと手を掛けてくれて、自分の方に引き寄せるようにした後、背中をポンポンと軽くたたいた。
「…お前さぁ、今日ずっと泣きっぱなし。怒った顔と泣いた顔しか…見てねーぞ??」
「…し、仕方ないじゃない!だって、こうゆうのってさぁ~…」
「いいから、笑いなさい!」
「嫌っ!」
「笑え~!!」
「いやだぁ~って…!」
瞬に歯向かえば歯向かう程、じりじりと詰め寄ってくる瞬の真顔を至近距離で捉えた途端、私の鼓動は急激に早くなった。
そういえば…こんな距離感って…。
久々なのかもしれない。
一気に緊張して私は顔をこわばらせた。
その一瞬の隙をつくようにして、瞬は私の右頬を軽く抓った。
「い、痛いよぉ。今日2回目だよっ!」
「艶香が笑わないからだろう。」
そのやり取りを、由美と蓮が実に幸せそうな顔(子供の喧嘩を見守る親のような何とも言えない顔)で、見ていた。