「同じ空の下で…」
「…ありがと。…てか、瞬、何で帰国したの?てっきり私、自分の事もあって、勝手にさぁ、艶香の事、迎えに来たのかぁ~?!なんて想像してたっ♪」

「ああ、瞬の帰国は…うん。言っていいのかな…。」

由美の問いかけに言葉に詰まり、瞬を軽くつついた。

「ん?」

瞬が私達に振り向くと、私よりも先に由美が問う。

「何で瞬、帰国したの?」

何も疑わない、澄んだ瞳の由美。
瞬は、一瞬顔を曇らせた。

「…じいちゃんが入院したんで、その見舞い。」

「へ~。そうなんだ~。…大丈夫なの、御祖父ちゃん?」

「多分。」

「で、いつまでこっちに?」

「今の所、未定。」

瞬は傍にあったペリエを飲み干し、口元を拭った。




『末期のガン』

多分、瞬はそれなりの覚悟をして帰国したのだろう。



「艶香、そろそろ行こっか。」

「え、いきなり?」

「なんだよ~。もう少しいいじゃん?忙しいの?」

「うん、忙しいの、俺。」

「…そ、そっか。」

「そろそろ艶香とくっつきたくなったし♪…なっ?」

「え、いや、え?わ…私は…。」

「分かったよ~。じゃ、時間出来たらまた連絡頂戴!」

「分かった~。じゃ、な。」

二人分のお金を由美に渡し、瞬は急に立ち上がった。

その瞬の後を追うように、私も慌ててその辺の荷物をバッグに入れる。


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