「同じ空の下で…」
行先なんて知らないし、何処に向かっていたとしても構わないと思ってる。
瞬にしがみついてる事実と彼と一緒に観る事が出来る景色だったら、どんな景色であろうと構わないと思った。
信号に差し掛かる度に、瞬は、自分のウエストにしがみついている私の手を必ず包み込むようにして触れてくれていた。
信号が変わると、またハンドルを握り、一気に加速していく。
何度目か、分からない。
また信号待ちの時、瞬が私の指をマッサージするかのように触れながら、何かをはめた感触を感じた。
ずっと瞬の背中にくっつけていた顔を一瞬上げ、自分の手を見ようとするが、瞬がまた包み込むようにして手を離してくれず、またバイクは走り始めて、結局瞬のウエストから手を離せずに居た。
バイクの後部席っていうのは、いつ振り落とされてもおかしくない程に緊張感が走る為、私は変に力をこめながら瞬にしがみついて居た。
こんなに太陽が照りつけ、暑さもあるだろうに、瞬はその行為を全く拒絶せずに受け入れてくれていて、本当にこの人を好きになって良かったと思った。
バイクに乗せられている事に少し余裕が出てきたころ、やっとの事で景色に目をやると、いつか見た光景が目の前を過ぎていくのが分かった。
瞬が見せてくれた…あの宝物がある、半島が目の前に見えてきたのだった。