「同じ空の下で…」
第22章 同じ景色,同じ瞬間(トキ)…
■第22章 同じ景色,同じ瞬間(トキ)…





鼻先をくすぐる、ほのかな潮風の香り。


瞬の背中に密着しながら、流れ行く景色を見ていた。

半島が見渡せるそこを目指して、曲がりくねっている坂を昇って行く。

一際大きくエンジン音を響かせると、減速して駐車場のような広場に停車し、エンジンを切った。


「…ふぁ~~~!やっと、来たぁ~~~!」

ヘルメットを外すと、瞬は伸びをしながら大きな声で言った。

数台の車が停まっていたが、人の姿が見えないそこは、まぎれもない冬真っ盛りのあの朝に、瞬と来た半島が見渡せる小高い丘の上…いわば、展望台のような場所で、あの日と変わらない港町が、眼下に拡がっていた。

被り慣れて居ないヘルメットをもがきながら外すと、軽く髪の毛を整えて、瞬の隣に並んだ。

伸びをした瞬の大きな手が、私の頭にポンと乗っかった。

「…懐かしいなぁ…。」

「…ああ。ほんと、懐かしい。でも、つい数か月前の事なんだけどなぁ。」

「…だよね。あ、でも、一か月くらい前に、タケル達と一緒にここの下のあたりでバーベキューしたんだよ。」

「…あ、何かソレ、誰かに聞いたな。…でも、ここは、俺と艶香で来る意味がある。」

「…うん。そうだね。二人じゃなきゃ、意味が無いや…。」

「…物足りないな、何か。今日も早起きしてここ、来れば良かったな。」

「…2人で…貫徹で…ね。」

そう言って、私は頭一つ分背の高い瞬の顔を見上げた。

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