「同じ空の下で…」
「タケル、瞬のお兄ちゃんて、瞬に似てるの?」
「…俺も、良く知らない…」
部屋まで送ってくれる間のタケルの車中は、無駄な灯りがなく、ナビの灯りすら、シートが被せてあってタケルの顔は良く見えず、シルエットだけが私の瞳から確認できた。
時折止まる信号待ちの時だけがタケルの表情を見てとれる時である。
眼鏡の奥の瞳は、微動だにせずずっと前を見ていた。
「…瞬は、…許せるのかな、兄ちゃんの事…。俺が瞬の立場なら絶対許せないな…。」
「…。」
私も瞬の立場に置き換えて考えてみるが、やっぱりタケルと同様、許せる訳がないと思った。
「…所構わず、殴り倒したいかも…。今まで何やってたんだって。家族捨てて心配掛けさせてって…」
「…俺らと同じ思考が瞬にもある場合…葬儀なんて…とんでも無い事になりそうだな…」
「そうだ…ね。」
…瞬なら…どうするんだろう…?
「タケル、いつもありがと。今日も御馳走様でした。」
「いいよ。全く問題ない。じゃ、また連絡するよ。」
「うん。じゃ、気を付けてね」
「おう、おやすみ。」
「おやすみ」
そう言って送ってくれたタケルを見送り、階段を駆け登った。