「同じ空の下で…」

いつでも憂鬱になりながら、モノクロに見えていた景色が、今日は少しだけ明るく色彩を感じた。

車窓から見える景色に、口角を上げながら、5個目の駅で降車すると、ヒールの音を小気味よく響かせ駅の階段を降り、オフィスまでの道を急いだ。

今日は、いつもよりも1本早い電車に乗り込んだのは、有給開けだから。



オフィスに着くと案の定、デスクの上には、書類が山積みになっていた。

小さな溜息をつき、パソコンの電源を入れて応接室と重役室の掃除をしに、その場をまた離れた。

常務の部屋のホワイトボードに、なぐり書きのように書かれている『FRI T社と打ち合わせ10:30~』と書かれていて、T社…いわば、Takanashi.coとの打ち合わせがあると、すぐに分かった。

我が社と高梨の会社は近々業務提携を結び、とある都市開発プロジェクトに参加すると聞いていた。Takanashi.coの電飾産業と、我が社の電子機器技術開発チームが、手を組んで京浜地区の開発に携わるらしい。
大手ゼネコンの建設会社や、タケルの居る行政機関である役所の『都市計画課』と一緒に一つの商業および娯楽施設ともいえるような…それで居て癒しの空間も組み込む…というものを作り上げる…らしい。
5か年計画のそのプロジェクトが、水面下で今、動き出そうとしていた。

だからこそ、高梨がここに来る意味が分かった。

…それを知ったのは、ほんの数週間前だったけど。

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