「同じ空の下で…」

いつも通りの鼓動に戻そうと、高梨の事とは全く関係の無い仕事の事を考え、なんとか復帰すると、給湯室に寄って、水を一杯飲み、デスクに戻った。


デレデレしてるつもりはないが、恋やら愛やらに侵されて一喜一憂している自分が…妙に情けなく思えた。


定刻からの始業と共に、溜まって居た仕事を片づけ始めていった。

私宛てと常務宛てのメールの処理作業と、回覧物の山と、決済を頂かなければいけない電子関連の処理と…。

夢中になって、パソコンのディスプレイにかじりついて仕事をした。

…やっぱり、仕事があって良かったなぁと思った。

打込める物が…あって、日常の様々な出来事から解放されるというか…。


「艶香ちゃん…。」

決済処理に手をかけ始めた頃、香織さんが私の肩を叩きながら私を呼んだ。

「はい?」

「…事務所の入り口の所…。」

「えっ?」

ディスプレイから目を逸らし、入り口の所に目をやると、最初は分身して見えてた一人のスーツ姿の影が、一人に見えた時に、やっとの事でその人の表情が捉える事が出来た。

高梨、参上…。

表情なんて見なくてもあの身長で分かる事ができたけれども。

高梨は、私の姿を見つけると、軽くこちらに向かって会釈をした。

軽く会釈を返した後、またパソコンの方に向きを変え、決済処理を一旦やめて、パソコンを省電力モードに切り替えて、香織さんに耳打ちをした。

「…打ち合わせに同席するように常務から言われてるので…失礼…致します…。」

「りょおか~い♪」

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