「同じ空の下で…」

「はーい、やめまーす♪」

「…もう。瞬が言うと本気なのかからかってるのか分からないだから。」

「…なぁんだよ、それ。やるわけねーだろ。」

「やらなくも…ないような気がしてくるのよね…。」


茶碗の中のお米全部を口に頬張ると、スープを含んで、お皿を持って立ち上がる。


「御馳走様っ!」


人をからかって楽しんでる瞬を横目に、私は少し急ぎ目で、歯磨きを済ませ、化粧を始めた。





それからわずか30分後に、瞬と共にやっとの事で出勤する事が出来た。

駅までの路、瞬は私の手を握り、手を繋いで駅まで歩いた。


「じゃ、私、こっちだから…またね。」

「うん、今日も頑張れよ、仕事。」

「瞬も、ね。」

「おう。また、連絡する」

「うん。」


瞬と駅で別れ、私は改札を抜けた。

振り返ってみると瞬の広くて逆三角形の背中が小さくなって行き、雑踏にまぎれて行った。


昨夜の瞬に比べたら、いつもの瞬に戻ってくれて良かったと…私は胸を撫で下ろす思いで、ホームまで歩いた。


私の前では無理に取り繕っているのかもしれないけど…。




今日もほぼ満員電車に近い様な電車に乗り込むけど、朝から甘い時間を過ごしてしまった私は、憂鬱な気分に等、とてもなる気になれず、彩られた色彩の景色を見ながら何処か笑顔に近いような顔で、窓の外の景色を眺めていた。
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