「同じ空の下で…」

「おはようございます」

いつもより声高になってしまっているのは、彩りに溢れた朝のせい。

憂鬱な顔で幽霊のような気持ちで出勤してる朝とは違うせい。

ひとえに、恋のチカラってやつなのかもしれない。

そして、金曜日っていう曜日のせいもある。


そんな朝は、いつもの業務、いつもの決められた単調な作業の繰り返しだって、思わず楽しくやってのけてしまうものだ。


…だけど、いずれ、決めなければいけない。

此処を退職して、日本から離れる事を…────。

その乗り越えなければならない決断を思い出せば、途端に気持ちが沈んでしまうが・・・・、瞬の事情の事もあるし、自分ひとりの決断では到底難しい問題だ。


ふと、いつものこの単調な仕事ってやつを振り返ってみれば、

秘書というポストは、嫌いじゃなかった。

周りの上司や職場環境にだって、恵まれているような気がする。

『結婚』なんて言葉さえなければ、退職の道なんて選ぶ要素のない、申し分のない仕事だった。

ただ、時折飽きてきたりはするけど、

『辞めたくない』っていう、気持ちは大きかった。


よく耳にする「結婚することになったし、仕事に生きがいを感じないので、とりあえず寿退社します」っていう気持ちにも、全くなれなくて、どうしても「結婚=退職」の方程式が私の中に生まれなかった。

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