「同じ空の下で…」
その日の午後の事だった。
常務に呼ばれて、いつものようにシステム手帳を携え、常務室に入る。
「お呼びでしょうか?」
「ちょっとそこに掛けてくれないだろうか?」
常務室には、総務部長と、秘書課と人事課の課長と営業部の本田部長も居て、私は驚いて声を詰まらせ、返事をするのも忘れ、その錚々たる上司が座る応接セットのソファに腰を降ろした。
この状況を只事ではない事に、驚きを隠せなかった。
「実は、英君に昨日のプロジェクトチームの一員に加わって貰いたいのだ。まぁ、本田君の推薦もあり、私も君は適任だと思っている。今の業務と兼任をしながらの任務になるのだが…どうだろう?引き受けてもらえないだろうか?」
「…へっ?」
思わず気の抜けた声になってしまったのは、さっき迄、声を詰まらせていたせいもあっての、動揺の声だった。
…と、まさか、ここで言い訳するわけにもいかず、私は口元を手で覆いながら小さな声で「すいません…」と顔を赤くしながら、謝った。
「艶香ちゃん以外の候補がなかなか居なくてね…。君は海外企画部の経験もあるし、今回のプロジェクトに際してもある程度の知識、経験、ノウハウが予め備わっていると僕は思ってるんだ。新しい娘に0から教える手間が省けるというか…。」