「同じ空の下で…」

情けない…。

うっすら浮かぶ涙を拭うと、飛び起きてまた一つ伸びをする。

草についた草を落として、立ち上がり、斜め掛けにしたバッグを背負い直した。


いつまでも、思い出に浸ってメソメソしてる場合じゃないな。


暫く寝転んでいた河川敷を昇り、俺は居場所がないであろう家に向かい歩きだした。

戦場に向かうかのような…変な感情だった。


兄貴が帰ってきた今、会社の事やらの俺にのしかかる負担が軽減されただけ。

むしろラッキーだと思おう。

だけど、アメリカへまた向かう事についての意思は固まっていた。

あれは、あれで俺に来た唯一の「俺を必要としてくれた場所」だからだ。

思ってる事を伝えられるように…と、語学の勉強もした。

コミュニケーションも取れるようにと、文化の勉強もした。

馬鹿にされないようにと、世界情勢の話にもついていけるようにと、現代経済についても日々勉強した。

そして、やっとの事でアメリカ生活にも活気が見えてきたところだった。

跡継ぎだとか、後継者だとか…そんな肩書きなんか要らない。

アメリカでの生活がいつか俺の財産となるように、充実した年月を過ごそうと思っていた。

…じいちゃんが言う通り『自己を切磋琢磨してやろう』と思う。



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